うつ病で自殺未遂。回復に必要なのは「自堕落に過ごすこと」

私は８年ほど前、両親が離婚して引越しをし、慌ただしい新生活を始めたのを機に、うつ病を発症しました。
私はそれまで反抗期というものがなく、何でも嫌なことや不満を自分の中に溜め込んで生きて来ました。
ですから、それが一気に溢れ出したのでしょう。

ある日、仕事に行こうと思ったら体が怠く、微熱があるのです。普通ならそれくらいで仕事を休んだりはしないでしょうが、当時の私は福祉施設で働いていたので、風邪などが利用者さんに移るといけませんから、仕事を休んで内科に行きました。そこで風邪薬を処方されたのですが、症状は一向に良くならず、微熱は１週間経っても続きました。
また、１週間ほとんど眠れず、食欲も全くなくなっていたのです。さすがにおかしいと、再び内科を訪れた私は、医師から「心療内科」の受診を勧められました。

それまで私は「心療内科」というものを知らなかったのですが、初めて受診した病院の医師は５０代の男性で、お世辞にも愛想が良いとは言えませんでしたが、静かにじっくりと私の話を聞いて下さいました。
そして「うつ病」と診断を下されたのです。その時には、抗うつ薬や睡眠導入剤を処方されました。
最初はそのような薬を服用することに抵抗がありましたが、私は心身ともに限界だったため、それらを飲んで家で療養する日々を始めたのです。

とにかく体が重怠く、何もする気が起きないのです。それまで好きだったテレビや音楽、本も全く面白く感じなくなっていました。ただ、一日中、ベッドに寝て外を眺めていました。

そんな日々が半年ほど続き、私は少しずつ外の世界への興味や食欲などを取り戻して行きました。
ところが、その頃から我が家は金銭的に苦しくなり、私の看病疲れもあって、今度は母が体調を崩し始めました。そんな母を見ているうちに、私は罪悪感に苛まれ、再びうつ病のどん底へと突き落とされて行ったのです。
母が無理を押して仕事に出かけている最中に、一人になった私は何度も手首を切って自殺未遂を図るようになりました。酷い時には、包丁を首に押し付けたこともあります。その傷跡は今も、くっきりと残っています。

また、この頃から私は酷い幻覚を見るようにもなりました。
そうして訳の分からないことを口走り、母にものを投げたりしました。そんな私を見かねて、母は私を精神科病院に入院させることにしたのです。勿論、私は嫌がりましたが、正直、もう自分で自分を制御できない状況にあったので、今から思えば当然の措置でした。

そうして私は精神科病院に３ヶ月間入院しました。
ところが、病院内では治療らしい治療は特になく、ただ毎日を籠の鳥のようにして過ごすだけでした。
退院後もまだ、私の自殺願望はしばらくは消えず、ビルの屋上に上がってみたり、電車のホームを覗き込んでみたりしていました。
また、夜になると不安が押し寄せ、私はそれを振り切るように深夜番組を見ながら、恐怖に打ち勝つためにひたすら食べ続けました。
そのせいで、１年間に１５キロも太ってしまったのですから困ったものですが、退院後は再び初めに受診した心療内科に通って治療を続け、２年かけてようやく、症状が落ち着きました。今でも病院には通っていますが、薬の量は半減しましたし、もう自殺願望も全くなくなりました。

最後に、私が今でも信頼して通っている大好きな先生が、初めての受診でおっしゃった言葉を記します。
「うつ病の患者さんというと、ご家族や周囲の方は『気分転換に散歩でもしなさい。』とか言いますが、それは逆効果です。うつ病に最もよく効く薬は、『自堕落に過ごすこと』なのです。」

この言葉からも分かるように、うつ病を治すには焦りや強制は禁物なのです。患者のペースで、ある程度自由にさせてあげることが、寛解への近道です。