環境の変化等が原因で子供が周期性嘔吐症（自家中毒症）に。

長男次男ともに５月生まれ、長男は三年保育の幼稚園に入った年のことでした。
朝は機嫌よく幼稚園の門をくぐり、お母さんと離れるのは嫌だと泣いて暴れるお子さんの手を繋いで入っていくほどなのに、一旦門が閉じられてしまうと、お母さん、お母さん、と泣き叫んで門から離れなかった毎日が続きました。
それも落ち着いてきて、元夫が長男の好きなキャラクターのイベントに連れて行く約束をして家族で出かけ、もう泣かないこと、と条件をつけました。
反抗期があったのかと思うほど素直で、お母さん子だった長男は、それきり幼稚園で泣くことはなく、６月を迎えました。
ある休日、朝食にホウレンソウの炒め物を出していました。
箸が進まない長男。それまで好き嫌いのなかった和食党の長男は、徐々にグニャグニャした歯ごたえのものが、苦手になってきていました。

１歳になったばかりの次男が可愛くて贔屓ばかりして、長男のことは叱ってばかりの父の前で、これはしまったな、と思った途端、
「早よ全部食べんかい！」
と父がテーブルを叩いて長男を怒鳴りつけました。
びくっと体を震わせた長男は、それまで食べたものを全部吐きました。余計にイライラした様子の父から隠すように始末をして、少しずつ水を飲ませ、部屋に避難させて様子を見ましたが、続けて吐くことはありませんでした。

どちらにしろ小児科は休診、また続けて吐いたら休日診療にかかろうと思いました。
叱られたショックで吐いたのかとは思いました。
素直な分、神経の細い、人に気を遣う子だったからです。
スポーツ飲料だけで、お昼は食べさせないほうがいい、と言ったのですが、やはり昔人間の母は、お腹すいたら可哀想や、とお粥やうどんを食べさせました。
結局、夕方からつづけさまに吐き通しになり、洗面器に顔を突っ込んで泣き続ける長男に、元夫は、
「飯食え」
と言いました。
吐き気、嘔吐の時は食事は駄目だ、と言うわたしと、吐くものがなかったら辛い、という元夫と押し問答です。
嘔吐が止まらない長男を、元夫、母、わたしが連れて、２４時間診療の小児科に車で向かい、診察を受けました。
「ケトン体が出てますね」
と女性の先生が、尿検査の結果を見て言われたので、
「あ、周期性嘔吐症ですか」
と言うと、頷かれました。
ケトン体の意味が解らない元夫が、それ何、それ何、とわたしの腕を引っ張るので、適当な説明をして、後で！と怒鳴りました。
「吐き気がある間は何も食べさせないでください。ポカリを少しずつ飲ませて様子を見て下さい」
長男を連れて元夫が出て行き、ポカリを買って、廊下で待っていた母に何か言いながら、プルトップを開けていました。わたしは薬を受け取っていましたが、元夫が長男に勢いよくポカリを飲ませるのが見えて、あかん！ちょっとずつ！と叫ぼうとしましたが、その瞬間長男はマーライオンのようにポカリを廊下に吐き飛ばしてしまいました。
周期性嘔吐症は、口からリンゴの腐ったような独特の臭いがするはずですが、長男のそれを家で確かめた時には気になりませんでした。個人差があるのでしょうか。
ナウゼリンの吐き気止め坐薬をもらい、家で入れてやり、何とか吐き気は落ち着いたようです。元夫が部屋を出ていったあと、先生が、
「お母さん薬剤師さんか何かですか？ケトン体のこととか」
と訊きました。
「いえ…余計なことに詳しくて、この病気も自分が昔罹っただけです」
「そうですか。息子さん、環境が変わったとか、何かストレスがかかる原因でも思い当りませんか？」
「４月から幼稚園に行き始めたことと、最初に吐いたのは、わたしの父が怒鳴ったからじゃないかと思います…」
「いろいろ我慢してると思いますから、ゆったりさせてあげて下さい。もし今後も繰り返すようでしたら、夜間でもすぐ来て下さい」
イベントに行きたいために泣くのを我慢し、次男との差別で怒鳴られ続けるのを我慢した４歳の長男は、それから毎日、わたしが一緒に寝てやることで安定したのか、嘔吐を繰り返すことはなくなりました。

ただ、風邪で吐きやすい子にはなったので、ナウゼリン坐薬は冷蔵庫にストックし、吐けば絶食、吐き気が少し治まったらブドウ糖の入ったスポーツドリンクを少しずつ、と、母と元夫に言い含めました。