渇き眼(ドライアイ)はなかなか治らないが、毎日パソコンに向かわざるをえない。

左眼に異状を感じた。
およそ2年前のことである。
パソコンの画面をみると、ぼやけた。
左眼が傷む。こすったら、激痛が走る。

だいぶ長い間、我慢していた。
原因のほうが先に特定できる。パソコンの画面の見つめ過ぎであると確信された。
病名も「渇き眼」と勝手に特定する。
症状を緩和させようと、市販の目薬を買った。
点したときには一時的に痛みが緩和するが、いっこうに治癒する気配がない。

視力も落ちてきたように感じ症状が悪化して、いよいよ諦めて眼科を受診した。
近くの眼科で、私のほうから「渇き眼だと思う」と告げる。
問診のアンケートに答えたあと、待合室で視力や涙腺からの涙量を測る。
下の瞼にコヨリ様のものを付着させて、刺激を与え涙量を測定した。

その後医師の診察となる。
医師は私の眼を視診したあと、機械で光を当て眼底などを検査した。
そののちおもむろに
「検査によって重篤な異状がなかった」
むね告知された。
かんでふくめるように、「白内障」などの眼の異状のないことをていねいに説明してくれた。

結果として私の「申告」どおり、「渇き眼」の診断だったようすだ。
パソコンの見すぎに注意するよう指示を受けた。
また眼に合った適切な眼鏡を購入するよう勧められた。

ただし処方された目薬をその後使いきったものの、点けた直後以外に症状は改善しない。
通院して点眼を続けたらよかったのかもしれない。
症状は悪化している。
その後通院は一度もなく、市販の目薬を何種類か使用している。
医師の指示を銘記したため、眼鏡は使用するようにした。

心身ともに健康で、大きな病気に罹ったことも・入院したことも・手術を受けたこともまったくなかった。
しかし私はこの「渇き眼」という病に少し諦めにも似たものを感じている。
それは人類がかつて経験したこともない
「長期にわたり光る液晶画面を長時間見続ける」
という「愚」を私は犯し続けているからだ。

この「危険」はまさに未知数だと思う。
目薬で治るような病気なのか。
それでも私は毎日パソコンに向かわざるをえない。
スマホの画面から解放されることもない。
仕事でも趣味でもパソコンから離れた生活が送れるのだろうか。

こうして私は「渇き眼」の治癒にはほぼ絶望的になってきた。
自身の寿命と視力との競争だという気もする。
そんな漠とした不安にさいなまれながらも、私は思いだしたように市販の目薬を点すだけである。