左下大臼歯を歯槽膿漏で抜歯。親知らずを利用し自家歯牙移植しました。 (写真あり)

昨年(2015年1月)、別の場所の虫歯(右上小臼歯)で歯科診療所に行ってレントゲン撮影したところ、先生が「え!!」と驚いた表情をされました。左下の大臼歯の顎の骨が溶けているとのこと。
先生によると”虫歯よりも溶けた骨の方に目が行った”とのこと。歯の上の部分は何の問題も無かったので外から見ても分からないもののレントゲンでは歯根の周りの骨が溶けていて炎症を起こしているとのこと。歯が根元で割れている可能性があるそうです。問題の歯の神経が生きているかどうかを電気刺激装置(?)で調べた結果、神経が死んでいたので保存は無理で抜歯しなければならないとの診断でした。

抜いた後はどうするのかなあ…と思っていたら両方とも下の親知らずは抜歯済みで、上の親知らずは正常に生えている状態だったので、残っている上の親知らずを抜いて移植することになりました。(下の親知らずは両方とも横に生えていたので8年ほど前に大阪大学歯学部付属病院にて抜歯済み。上の親知らずは両方ともわずかに下の大臼歯と噛み合っていたので、「将来移植に使えるかも」ということで抜かずに保存)

抜歯前に歯の移植についての説明を受けました。

順調にいけば生着するまでに3週間かかり、その後移植した歯の神経を抜く治療を受けてから被せ物をするとのこと。初期段階において失敗するとすれば細菌の感染症を起こす場合で、移植後1週間で成功か失敗か決まるそうです。年齢も移植の成否に影響を及ぼす要素でしたが30代ということでセーフ。
ドナー歯が二本あったのでチャンスは二回と言われました。

右の大きな虫歯と小さな虫歯を全部治療した後に、4月末に問題の左下大臼歯の抜歯となりました。歯を2つに切断して、歯槽骨を削らないようにしたので時間がかかったとのこと。トータルで1時間かかりました。歯を抜いた後も骨を削られたり、炎症を起こしている歯肉を切除されたりしました。抜歯後開いた大きな穴は止血剤を含んだゼリーで蓋をして終了。治療後に先生がおもむろに光学顕微鏡を取り出してきて、何やら切除した肉片の一部を観察していました。観察の結果、腫瘍ではなかったとのことでした。

抜歯後に抗生物質を処方されましたが一向に腫れが収まらず。一週間後に消毒と経過観察のために診察を受けたらもっと強い抗生物質「ジスロマック」を処方されました。腫れがひどかったので、抜歯後しばらくの間は自分で近所のダイコクドラッグで購入してきたヨードの入っているうがい薬で毎日うがいをしていました。ちなみにうがいは歯を移植して銀歯を被せるまで続けました。

その後に腫れが収まりました。その後一週間おきに消毒のために通院しました。
抜歯直後は骨が外部に剥き出しになっており、移植は骨が皮に覆われるまで待たなければならないと言われました。骨が皮に覆われるまでに3週間かかりました。そして抜歯してから4週間後(黄金週間後)にやっと移植手術をすることになりました。左上奥に麻酔注射後に親知らずを抜き、写真撮影後に素早く元の場所に戻されました。先生によると「抜いた歯を保存するのに元の場所に置いておくのが一番良いとのこと」。その後いざ移植先である左下の歯茎をメスで切開しようとしたら先生が麻酔を忘れていたことに気が付いて慌てて麻酔注射…。歯医者さんは二か所に同時に麻酔をかけることは殆どないのでしょうか。

改めて下の歯茎を切開してから移植用の歯を軽く差し込んでサイズを確認。親知らずの方が小さいのでスペースは十分でしたが、骨がひっかかるので移植できるように骨を少し削って調整してから移植する方向を決めて移植しました。歯を差し込んだ後に、移植した歯の上の部分を削って上の歯と当らないようにしてから長い糸で歯茎と移植した歯を縫い付けて手術が終了しました。鏡で移植した歯を見てみると、「×」字の形で歯が糸で縫い付けられていました。移植した歯は絶対安静ということで、暫くの間は食事は右半分、歯磨きも移植した歯を避けるようにしました。ジスロマックではない弱い方の(?)抗生剤3日分と痛み止めを処方されましたが、痛み止めは使用せずに済みました。
ドナー歯があった場所は何もせずに放置されましたが、全く腫れませんでした。

移植直後は舌で移植した歯をほんの少し触るだけで歯の奥の方で歯肉が挟まるような感触で激痛を感じましたが、3日目になると舌で歯を軽く押しても歯肉が挟まる感覚が無く、かわりに(普通の)歯を押すと感じるような感触に変わっていました。他の歯よりもわずかな力でも押される感じが強かったです。

移植後は抜歯後のような腫れが無く、歯茎が手術用の糸に引っ張られるような痛み程度しか感じませんでした。
手術後1週間後に抜糸のために診察を受けました。先生が私の顔をじろじろみて、「腫れていないようだね～」と言われました。患部やレントゲン撮影などではなく、顔を見て移植の成否を判断されるとは思いもよりませんでした。抜糸してから丁寧に移植した歯の汚れを取ってもらって処置が終了しました。

処置の後に先生が「写真を撮るのを忘れてたから写真を撮らせて」と言われたので、私は「レントゲン撮影かな???」と思っていましたが、先生がおもむろにデジカメを持ってきて口の中の写真を撮影されました。顔の正面でフラッシュを焚かれてまぶしかったです。

その翌週にも診察を受けました。相変わらず移植した歯を磨けないので汚れがたまっていたので回転するブラシみたいな器具で汚れを除去してもらいました。この頃になると移植した歯が歯茎に支えられて(?)、舌で触ってもぐらつきが無い程度になっていたので、大きな力がかからないようにしつつ歯磨きもできました。それからさらに2週間後に移植した歯の神経を抜く処置を受けました。神経が繋がっていないので麻酔無しでも痛みは全く感じず、神経を抜く時に差し込まれた針金みたいな器具の先端が奥の方で歯肉を突くような感覚はありました。神経を抜く処置の際にレントゲン撮影したら順調に生着しているとのこと。但し溶けた骨で大きな穴が開いているので、骨が回復するまで当分の間噛むことができないと言われました。
神経を抜く作業が二週間続いた後に銀歯を被せて終了しました。処置自体は終了したものの、この時点ではまだ歯に力がかかると痛みを感じるため食事は右半分のみでした。そしてすべての治療が終了したのは7月です。

治療が終了してから2か月後には、柔らかいものは移植した歯でも噛めるようになりました。現在(移植後8か月後)は固い物でも噛めるようになりましたが、今でも移植した歯を押したときの感触はほかの歯よりも敏感に感じます。移植した歯で噛んだり舌で押すと押される感触があるので、人工的に取り付けた歯というよりも、元々そこに生えていた歯のように感じてしまうほどです。唯一違う点は元の歯よりも小さな歯を移植したので、菜っ葉やもやしが詰まることです。
移植手術を振り返ってみると、一番辛かったのが悪い歯(左下大臼歯)を抜いてから腫れが収まる10日間で、移植手術の後は麻酔が切れた後も歯茎に縫い付けられた糸の所が少し痛かっただけで、移植した歯や移植に使用した親知らずを抜いた場所は腫れも痛みもほとんど感じませんでした。

移植手術と言っても不要な親知らずを抜いてきて、歯の無い部分に差し込むだけで自然にくっついてしまうので、人間の体って凄いな～と思います。