不妊症検査の結果、夫がAZFc微小欠失と判明。手術ではなく、精液を複数回採取し、顕微授精しました。

私達夫婦の実体験を通じて、少しでも多くの同じ症例の方の参考になればと思い、投稿を決意しました。

-不妊発覚の経緯
私達夫婦は結婚してすぐ6ヶ月ほど子供ができず、年齢的にも私は33歳、夫は35歳ということもあり、早すぎることはないと検査を受けました。すると、最初に検査した病院では、私は問題はなく、夫のほうが精液中に精子が全く見つからない無精子症と診断され、より精密な検査のできる専門の施設に行ったほうがよいと言われました。
突然思ってもみない診断で涙が止まりませんでした。専門の施設ってどこに行けば良いのだろう？と、誰にも相談できないなか、必死でインターネットで探し、まずは男性不妊専門のクリニックに電話しましたが、たまたま予約が1ヶ月先にしか取れず、いてもたってもいられず、他に見つけたクリニックに予約を入れました。

-精密検査の結果
そのクリニックでは、より高度な機械で確認し、僅かながら精子が見つかりました。さらに原因を調べるため遺伝子検査などをしたところ、AZFc微小欠失、つまり、一応は精子が作れるものの、数が少なかったりあまり状態がよくない、しかも、子供が作れたとしても、男の子だと必ずこの状態が遺伝する、ということが判明しました。また、何故夫がこうなったのかは、夫が産まれるときに関与した精子がたまたま当該欠陥のある遺伝子を持っていたようで、生活習慣の改善や漢方薬などで治せるものではないとのことでした。原因がはっきりしたことで、誰のせいでもないことがわかり少し気持ちが楽になったのと、また無駄な治療(世の中には無精子症で悩む方に原因構わず治せるかのような誤解を招く宣伝や記事も見受けられ、危うく私達もそれを藁をもすがる気持ちで真に受けるところでした)をせずにすみました。

-治療方針
このような症例の場合、より確実に子供を作るためには、精巣から直接手術で精子を取り出す方法が一般的との説明でした。しかしながら、一回きりの手術で、たまたまそのときに良い精子が取り出せない可能性もあるとのことでした。ただでさえ、精巣を手術するという肉体的精神的に辛い手術なのに、万が一見つからない場合はもう子供が作れないかもという不安があり、少し手間と時間がかかるものの、何度か精液を凍結し、その中の状態のよい精子で顕微授精ができないか医者に相談したところ、やってみましょうと快く受け入れてくださいました。

-治療を踏み切る決意
一方で、もし男の子だった場合、将来必ずその子も同じ思いをしてしまいます。そのため、本当に治療すべきかはかなり悩みました。最終的には、同じクリニックの遺伝カウンセラーにも話を聞き、例え将来子供がその症状を知ってもあなた方が責められるようなことはない、あなた方を見ていればそう思う、どうか子宝に恵まれてほしい、との優しく心強いお言葉を頂き、また、将来医学の進歩で、より苦労が軽減されてるかもしれないと前向きに考えるようになりました。

-治療の経過
当該クリニックは予約ができ、土曜日にも診察が可能だったため、仕事を半休にしたり、なるべく土曜日に入れるなどして、何とか仕事と両立して通院しました。夫の精液がある程度集まったところで、私の方で卵巣刺激をして、卵子を採取し、顕微授精させました。幸い、まだ私が33歳だったため、正常に成長した胚盤胞を6つ凍結できました。そして、その中の特にいい状態のものを凍結胚移植をし、無事に妊娠出産、元気な男児がすくすく成長しています。

-診断を最初に受けたときのショック、その後長い間悩んだこと、その時期は子連れの人を見るたびに涙が出てしまったことなどは未だに忘れられません。不妊治療は年齢との戦いでもあります。少しでも不安があればすぐにでも確認し、原因を知ることがまずは大事です。私達は早めに検査し、早めに治療に踏み切ったことでうまくいったのだと思います。不妊に悩む方でも、その原因や治療の難易度は様々ですが、もし同じ症例であれば、少しでも参考にしていただければ幸いです。