自覚症状の無い水平埋伏智歯（親知らず）全身麻酔で抜歯術を受けて良かったこと (写真あり)

まず、私がこのレポートを書こうと思った理由から、お話しさせて下さい。
それは、なんの自覚症状の無い歯の抜歯に迷ったとき、周りの人に話しても、インターネットでいくら情報をあさって、自分と似たケースを探し出し正解を求めても、ただ悩みが深くなるだけであまり役に立たなかったからです。
同じような状況を抱えた人のため、きちんとした一つの指針を作りたいと強く思いました。

私がお伝えしたいことはただ一つ。
どんな状態の親知らずでも、抜いた方が良いということです。
その理由が、最後までお読み頂くことで、わかって頂けると思います。

元々、親知らずは四本あり、下の二本が埋伏智歯で、右側のみ水平埋伏智歯でした。
（左側の埋伏智歯は、十年前すでに抜歯しています）

奥歯に向かう形で横向きになっており、歯茎の中、顎の中に埋まった状態です。
付近の歯茎が腫れることもなく、痛むこともなく、生えていない歯の真上の歯茎が少しぶよぶよしているかな？と思うくらいで、困るようなことは全くありませんでした。
しかし、隣の奥歯の歯周病が進行しており、かかりつけの歯科医院で埋伏智歯の抜歯を勧められ、大きな病院の口腔外科を受診しました。
CT画像撮影をすると、歯の根っこに下顎の神経が回り込んでおり、抜歯術を行うことで顎に麻痺の出る可能性があることが分かりました。
手術の際、少しでも神経に触れると障害が出るためです。
ただ、このまま放置したところで、歯周病が進行することで病菌が回り、歯周病が原因で顎が麻痺するだろうということでした。
今、一本の歯で済ますのか、奥歯を含めた二本の歯をあきらめてしまうのか、そういう問題を突き付けられました。

選択肢はありませんでした。
使わない歯のために、使えない歯のために、奥歯を失うわけにはいきません。
かかりつけの先生の「年をとるまでずっと奥歯を使いたいですよね？」という言葉が印象的で、すごく当たり前のことを言っているのですが、ふだん意識することのない歯の健康を深く考えさせられました。

私の場合は、例え局所麻酔をしたところで神経が近すぎるため、ビリッ！とした感覚はあるということと、口を開けている時間が長くなるためきついので、全身麻酔で抜歯した方が良いということでした。
入院せず外来で抜歯しても、難しい歯の抜歯の場合は患者さんが耐えられず、途中で中止したケースもあるということで、やむを得ずその提案を受け入れました。

ここからは、入院中に実際なにを行ったのか、記録を箇条書きで紹介していきます。


・入院一日目（入院と準備）

口腔外科の担当医とお会いして、正式な入院申込書を一緒に作成する。
クラークが迎えに来て、看護師に書類を提出し、簡単な問診がある。
病棟に案内され、ナースステーションの前で体重と身長を量る。
病室に案内される。６人の大部屋。
クラークがレンタルパジャマを持って来てくれて着替え。
早番の看護師さんが挨拶に来て、バイタルチェックと、入院中の簡単な流れの説明を受ける。
薬剤師さんが来て、もともと服用している薬の確認と、明日から使用する薬一式を置いて行く。
歯科衛生士さんが迎えに来て、口腔外科に行き歯のおそうじ。
夕方、麻酔科医との面談で、注意事項等の確認を行う。
手術室看護師から、手術の流れの説明を受ける。
食事はふつう食。
食後、シャワー浴を済ませる。
翌朝６時にかけて、経口補水液を１リットル飲む指示がある。これは点滴の代わり。
２０時ごろから飲み始める。
担当医が顔を出しに来てくれる。
以上ですが、病室には半分くらいしかおらず、バタバタと時間が過ぎていく手術前日でした。


・入院二日目（手術と管理）

手術前
６時以降の飲食禁止のため朝食なし。
上のみ、裸に病衣を着て迎えを待つ。下は、下着とズボンをはいていて良いということなので、パジャマのまま。
手術室まで歩いて行く。
入口の中で手術内容の確認。
手術室の中がさらに分かれており、案内された場所に行く。
スタッフが、それぞれ名前を名乗り挨拶してくれる。
アレルギーと、手術内容の再確認がある。
室内履きを脱ぎ、ベッドに横になる。
右腕は血圧計の器具を巻かれ、左手の甲には点滴の針が入る。
酸素マスクを当てられ、数回の呼吸で眠くなり意識が無くなる。

手術後
あまり声がはっきり出ない。
軽く吐き気があり、点滴に吐き気止めを入れてもらい落ち着く。
昼食はなし。
術後最初のトイレは、看護師さんに同行してもらわなくてはいけないとのことで、行きのみ一緒に行ってもらう。
術後１時間で、酸素マスクを外してもらい、特に呼吸に問題がないためマスクは終了。
術後２時間前後で、担当医が病室に様子を見に来てくれる。
術後３時間、頭痛がしてきたので痛み止めの点滴を追加してもらい、症状も和らぐ。
看護師さんが気をきかせて、水を飲むための吸い口を貸してくれる。
病衣から、パジャマに着替える。
高熱も出ず経過良好だったためか、術後の頻繁なバイタルチェックなどは無く放置される。
点滴と、急激な体の変化のせいか、急に頻尿になる。
診察に呼ばれて、傷口の状態の確認をしてもらう。問題なし。
唾液が多く出る感じがしても、異常ではないとの説明を受ける。
夕食は、おかゆときざみ食。おかずは全てみじん切りになっている。完食。
お茶をマグカップで飲むことが出来た。
ペットボトルでも飲み物を飲める。
処方されたうがい薬で口を優しく数回ゆすぐ。
鏡を見ると、顎に青アザが出来ていた。
お風呂に入る体力はありそうだったけど、面倒なので入らない。
同室の患者さんのいびきや、救急の患者さんが隣のベッドに入ってきたため、看護師さんの頻繁な巡回の音であまり眠れない。
朝昼夜三食の食後以外、追加で飲むとんぷく用の痛み止めを飲む。
夜中の２時すぎにナースコール。眠剤を出してもらう。
軽いものだけど、万が一夜中にトイレに起きてしまったら、ぼーっとして転倒など危ないのでナースコースをして下さいとのこと。
４時間ほど眠れた。
以上ですが、二日目は手術後以降ほとんどやることが無く、かといってテレビや読書に向かう元気もないので、病室の天井がお友達でした。


・入院三日目（退院）

起きる頃には、顎がかなり腫れていた。
退院診察があり、口腔外科に呼ばれる。
傷口がきれいとのことで、問題がなかった。
看護師さんに、点滴の針を抜いてもらう。
クラークが、病室に会計のメモを持ってくる。
忘れ物チェックをして家族と退室。
会計と、医療保険用の書類手続きをして帰る。
和食屋さんで、昼食にうどんとちらし寿司を食べられた。
以上ですが、薬で体が持っているという感じで、少し買い物に寄り道しただけで疲労しました。


ここからは退院後の様子です。

退院して６日で抗生物質が終わりました。
お陰で感染症等の問題はありませんでした。

７日で痛み止めが終わりましたが、もともと体調不良で頭痛になりやすいため、術後の体力低下に伴う頭痛で、さらに一週間は手持ちの鎮痛薬を服用していました。
無くなった歯周辺の痛み自体は、痛み止めを必要とするほどではなく、忘れた頃にたまに疼く程度だったので、他に体質的な問題の無い方は、痛み止めの延長は必要としないと考えて良いと思われます。都度、医師と相談して下さい。

とんぷく用の痛み止めは、もともと夜中に痛む時の追加用でしたが、普段から夜中にトイレに起きてしまうため、痛む前にと念のため飲んでいました。
こちらも７日で終わりました。

見た目ですが、退院後二日をピークに腫れが引いていきます。
アザは、顎から首にかけて黄色くなり、一週間もすると薄く目立たなくなり、十日経つ頃にはきれいに戻っていました。

退院後一週間目に診察があり、縫合箇所の抜糸を行いました。
傷口に問題は見られませんでした。

抜糸をしてから一週間ほどで口が全開できるようになりました。
私が怖くてあまり開けなかったこともありますが、糸が突っ張ったりする感じがあるので、抜糸するまでは半開きで食事していました。
会話には支障なかったです。

少し前後しますが、抜糸後二日目から、傷口付近から血ではない味がしたため脱脂綿を当ててみたところ、黄色い体液が付いてきました。
匂いはほとんどなく、口から吐き捨てるほどの量もなく微量です。
擦り傷を作った時ににじむリンパ液のようでした。
不安を感じて、急きょ口腔外科を受診しましたが、状態に問題はないということでした。

傷口は、激しくゆすぐとしみます。
例えば、知覚過敏のような感じです。
歯が一本無くなったぶん、奥歯の後ろに溝が出来た状態のため、奥歯の裏側をよく磨くように指導されました。


今回、自覚症状の無い水平埋伏智歯（親知らず）全身麻酔で抜歯術を受けて良かったことは、いざメスで切って開いて見たら、その歯には歯石が付着しており、一部分は虫歯によって真っ黒に変色して、周りにも炎症があったことです。
これは、私にとって予想外のことでした。
担当医によると、自覚症状が無くても膿がたまっているなど、医学的に考えれば痛いはずなのに、患者本人はなんともなかったということが実際にあるそうです。
まさに人体の不思議です。
また、歯の炎症が原因で敗血症を起こし亡くなる方もいるとのことでした。
最悪の場合、歯を二本失うどころか、命が失われていたかもしれない。

たった一本の歯で、私の命は救われました。

痛まない自覚症状の無い歯＝問題ないという認識は誤りでした。
一概には言えませんが、やはり医師の指摘には理由があるということです。

歯を取っても、次の日に交通事故に遭って死ぬかもしれないから、やめようかなと家族に弱気な発言をしていたこともありました。
（極論というか、不安から自虐的な冗談を言っていました。不愉快になられたらすみません）

でもそれは、とんでもないことだったのです。
私は、自分の寿命を延ばすチャンスを頂きました。
今、決断して本当に良かった。
協力して下さった医療関係者のみなさま、支えてくれた家族と友人に感謝します。


※おくすり情報等は別項目に登録しています
すみません。眠剤のみおくすり手帳に記載なく、失念してしまいました。


・抜歯後一週間の食事について参考情報

飲み物は何でも飲んでいます。アルコールは元々やりません。
食欲が無かったら、ヨーグルト、ゼリー、プリンがお勧めです。
食べ物は、離乳食や介護食のように、小さく柔らかいものが最適です。
おかゆはもちろんのこと、角切りにした野菜と豆腐や玉子を入れた雑炊など。
柔らかくすれば食べやすくなるため、細かく刻むのが面倒だったら、煮物が良いです。
麺類は、そうめんのような細いものか、うどんがお勧めです。
抜歯後は口の中も少し腫れるのと、縫合した糸が気になり反対側だけで噛むようにしているため、お肉はまだ食べていません。噛み切る動作が難しそうなので。
唯一、挽き肉だけは食べられます。
焼き魚はほぐしています。
お豆腐は何でも使えるし、何度も噛む必要が無いので重宝しています。
納豆はねばねばしているけれど意外と食べにくく、しばらくはみそ汁に混ぜて食べました。
普通の固さに炊いたご飯は、少量ずつでもやはり食べにくいです。
口が大きく開かないのと、片側で噛むようにしていることから、少しずつしか入らないため食事に時間がかかります。焦らずゆっくり。
ミックスナッツや、パリっとして固いお菓子、歯に詰まりそうな食べ物は避けています。
食べられるものを、食べたいだけ、楽しんで食事できるように工夫してみて下さい。


・入院での抜歯が決まっている方へ

私が入院した病院の費用は、事前におおよその目安は８万円と言われていましたが、実際の支払い額は６万円弱でした。
ただし、状況により費用が前後することも考えられます。
『健康保険限度額適用認定証』が使える場合があります。早めのお手続きを。

加入している保険の『医療保険』『医療特約』などで保険が下りる場合があります。
こちらも合わせて、必要書類の請求をすることをお勧め致します。
ちなみに、私の加入している保険では、入院給付、書類給付、退院給付、手術給付金が出ました。
全ての人に当てはまらないと思いますので、契約内容をご確認ください。


・全身麻酔での抜歯術（または外来での抜歯）を検討されている方へ

本当に苦しいのは、病気で体が痛いとか、心配で頭がいっぱいになることではない。
人が本当に苦しむのは、前に進めない時。
今回のことで、私はそう痛感しました。
それこそ四六時中、抜いた場合のメリット・デメリットと、抜かない場合のメリット・デメリットを天秤にかけ、右往左往する気持ちを抱えたまま日常を送るのは、苦痛でしかなかったです。
あなたが、ここに辿り着いて、前に進めるお手伝いが出来たらとの思いでお伝えしました。
どうぞお体を大事になさって下さい。
どのような選択をするにしても、心身の快復をお祈りしております。


ご参考になれば幸いです。
長々とおつき合い頂き、ありがとうございました。