Caloo(カルー) - [特集記事] 【医療メディエーター最前線】医療業界注目の医療メディエーターとは
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医療メディエーター最前線

医療業界注目の医療メディエーターとは

最終更新日: 2010年11月05日

記者: 具志林太郎

Caloo編集部では、近年急激に受講者数を増やし、医療関係者の間で注目を集める医療メディエーターについて取り上げる。監修は日本医療メディエーター協会代表理事和田仁孝早稲田大学教授にお願いした。

急激に受講者を増やす医療メディエーター

医療メディエーター(医療対話仲介者)とは医療現場での苦情や事故に対して患者側と医療者側の対話の橋渡しをする院内スタッフである。社団法人日本医療メディエーター協会(理事長 日本医学会会長 高久史麿氏)により院内医療メディエーター養成プログラムを通した認定が行われている。

2005年の院内医療メディエーター養成プログラムの開始からその参加者は増え続け2010年度は2,500名に達する見込みだ。背景には多発する医療事故、医療過誤、クレームなどに対して誠実に対応したいと願う医療機関が積極的に取り組み始めたことが挙げられる。

医療メディエーターの受講者数は今年度2,500名に達する見込みだ。2005年度の開始時と比べると32倍となる。前年との比較でも1.5倍となる見込みだ。

表面に現れているクレームから両者共通の本質的なニーズを引き出す

実はクレームが発生しても患者と医療従事者の本質的なニーズは同じであることが多い。例えば、患者が「担当看護師の交代」を要求する場合、この患者の本質的な原因は「より適切な医療を受けたい」というものである。医療従事者も当然患者に「より適切な医療を受けてもらいたい」というニーズを持っており実はクレームの奥にある両者のニーズは共通している。

「担当看護師の交代」という表面に現れているクレームを論点として患者と医療従事者が対立すると交代するかしないかのみに議論が終始し解決することは難しいが、「より適切な医療を受けるにはどうしたらよいか?」を共に考えるということが論点になると解決できることがあるというわけだ。

長年診察を続けてきた患者が前触れもなく急に怒りだした

ある病院で長年診察を続けてきた患者(Aさん)がある日突然怒り出した。「最近、先生の診察が機械的で不満だ」というものである。担当医師は適切に診察を行っており、長年診察を続けて信頼関係が築けているはずの患者からのクレームに戸惑い医療メディエーターに相談した。

医療メディエーターがAさんと話すと次のような事柄が明らかとなった。Aさんは直近2ヶ月間で担当医師の態度が冷たくなったと感じていた。以前は診察の最中にちょっとした世間話をしてくれていたのにそれがなくなったからだ。それにより実は自分は重症の病気に罹っていて先生に見捨てられたのではないかと思い悩んでいたというのである。

担当医師に医療メディエーターが確認したところ、実は2ヵ月前に外来担当の同僚医師が辞めており少し忙しくなっていた。それにより気心の知れたAさんに対する診察が無意識の内に簡略化されていたかもしれないということだった。

このケースでは担当医師がメディエーター同席のもとでAさんに事情を説明することで解決に向かった。Aさんは担当医師の診察を受けたいと思っており、担当医師もAさんを診察したいという共通のニーズがあった。Aさんは担当医師から診察を受けたいにも関わらず2ヶ月前から世間話がなくなったことをきっかけに、担当医師に見捨てられたと感じてしまい「診察が機械的で不満」だというクレーム繋がってしまったのである。

対立構造が基本の裁判では被害者遺族、医療従事者双方とも納得することが難しい

医療事故を裁判で争うと被害者遺族、医療従事者双方とも納得できないケースが多いといわれる。これは裁判が対立構造を基本としているからである。

例えば、医療従事者側に謝罪の気持ちがあっても対立構造の裁判では不利になる可能性があれば謝罪を行うことは困難となる。

また、裁判で行われる真実の究明とは、責任の所在が誰にあるのかを特定することにある。しかし、被害者遺族が望む真実の究明とは最期の様子や経過を知りたいというものが多い。これは最期の様子や経過を知ることによってその想いに共感し、喪失という事実を受け止める手がかりとなるからだと考えられている。さらに、医療従事者側の考える真実の究明は客観的な事実の経過を知り、それにより当事者としての自分の行動を省みる契機としたいというものである。

このように真実の究明の捉え方にしても裁判、被害者遺族、医療従事者で異なることが多いため、結果として誰も満足できないという事態が起きることがある。医療メディエーターは中立的第3者として被害者遺族、医療従事者の双方に共通する本質的なニーズを引き出し、合意形成を目指すため対立構造の裁判と異なり双方の疑念が払拭され相互理解が促進されやすい。

医療メディエーターの今後

医療メディエーターの注目度は上がっているが、実際に取り組みを行っている医療機関はまだ少数だ。今後は取り組む病院が増えると同時にクリニックなど小規模な医療機関にもすそ野が広がっていくことが期待されている。

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