皮膚潰瘍特集
糖尿病の合併症「皮膚潰瘍」の症状と新しい治療法(写真あり) 大阪大学大学院 中神 啓徳先生に聞く
最終更新日: 2016年3月1日
記者: 具志林太郎
治療が難しい皮膚潰瘍の原因や最新の治療方法について、大阪大学大学院医学系研究科健康発達医学 中神 啓徳先生にお話を伺った。
記者:治りにくい皮膚潰瘍とはどのようなものでしょうか。
中神先生:皮膚潰瘍とは、傷害された皮膚が様々な原因でなかなか回復せず、傷が治らないまま組織が欠損してしまうことを言います。
症状として、傷が治らない、しみる、じんじんする、臭いがする、腫れている、浸出液が出続けるような状態は該当する可能性があります。
記者:どのような人が皮膚潰瘍にかかりやすいのでしょうか。
中神先生:糖尿病、閉塞性動脈硬化症・膠原病(リウマチ)等がある方がかかりやすい方となります。
よく発生する場所としては、ひざから下の足、特に足指や足の裏です。その部分は血行が悪くなりやすく、感覚が鈍くなり、むくみも強くなるためです。
記者:一般的に行われている治療法は何ですか。
中神先生:傷口の湿度を保ち自己修復能を高めるための湿潤療法、傷口を覆うための創傷被覆材の使用があります。しかし細菌感染が生じた場合には一旦中断し感染治療を優先させる必要があります。
糖尿病、膠原病などの患者さんは免疫が低下しているため治療は困難を極めます。
また消毒剤だけでの治癒は傷の回復を遅らせ、不適切な抗生物質の使用継続は耐性菌を出現させ、かえって悪化させる可能性もあります。
記者:これからの新しい治療法はあるのでしょうか。
中神先生:感染の危険性の高い難治性潰瘍の患者さんに対して有効な治療法が求められています。
最近、抗菌ペプチドによる治療が開発されつつあります。これは皮膚の自然免疫バリア―機能として働き、細菌に対する抗菌作用と同時に傷修復作用による皮膚の再生ができることが期待されています。
記者:開発は進んでいるのでしょうか。
中神先生:抗菌ペプチドの多くはまだ研究段階ですが、近年、うがい薬や傷に対する外用薬などの局所投与薬として抗菌ペプチドを用いた創薬開発を目指した臨床試験がいくつか行われています。
難治性潰瘍についても我が国でも大学病院を中心に治療研究が進みつつあります。
中神 啓徳 略歴
- 1994年3月 奈良県立医科大学卒業
- 1994年4月 自治医科大学内科レジデント・循環器内科医員
- 1997年6月 大阪大学医学部老年病医学(第4内科)研究生
- 2000年2月 愛媛大学医学部 助手(医化学第一講座)
- 2001年7月 米国Harvard大学医学部Brigham and Women's病院研究員
- 2003年4月 大阪大学医学部附属病院未来医療センター研究員
- 2003年10月 大阪大学大学院 助手(医学系研究科 遺伝子治療学)
- 2010年4月 大阪大学大学院
大阪大学・金沢大学・浜松医科大学連合小児発達学研究科 健康発達医学寄附講座教授
(2012年から 大阪大学・金沢大学・浜松医科大学・千葉大学・福井大学連合小児発達学研究科に名称変更) - 2015年4月 大阪大学大学院医学系研究科健康発達医学寄附講座
所属学会
- 日本内科学会(認定医)
- 日本循環器学会
- 日本血管生物医学会(評議員・財務委員)
- 日本高血圧学会(評議員)
- 日本癌学会
- 日本遺伝子治療学会(評議員)
- 日本心血管内分泌学会(評議員)
- 日本抗加齢医学会(評議員・将来構想委員・選挙制度委員)
- 国際心臓研究学会日本部会(評議員)
- 日本動脈硬化学会など