Caloo(カルー) - [特集記事] クローン病の薬剤治療で外科手術回避やQOL向上も
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クローン病特集

クローン病の薬剤治療で外科手術回避やQOL向上も 福岡大学筑紫病院 消化器内科 講師 平井郁仁先生に聞く

最終更新日: 2014年09月12日

記者: 具志林太郎

クローン病の判断基準や治療法、最新情報について、福岡大学筑紫病院 消化器内科 講師 平井郁仁先生にお話を伺った。

記者:クローン病とはどのような病気でしょうか?

平井先生:クローン病は、若年者に多く発症する原因不明の腸疾患です。アメリカのクローン先生が最初に報告したことからこの病名が使われています。

当初は“限局性の回腸末端炎”として報告されましたが、現在では口腔から肛門まで全ての消化管に病変をきたしますことが知られています。回腸末端(小腸の終末部)は好発部位ですが、小腸と大腸のあらゆる部位に炎症を起こします。病変としては、口内炎で認めるアフタのような小さなものから縦走潰瘍(縦に長い潰瘍)や敷石像(西欧の石を敷きつめた道から由来する潰瘍と正常部からなる凹凸所見)など典型的でやや高度なものまで様々な形態を示します。

根本的な治療はなく、症状をコントロールし、生活の質(QOL)を向上することが治療の目標となります。このため、治療によって軽快しても治癒という言葉は使いません。病勢を表すには、寛解(疾患が落ち着いている状態)と再燃(一旦落ち着いていたが、再び増悪すること)という言い方を用います。

長期的には再燃と寛解を繰り返す難治性の疾患と考えられてきましたが、最近では治療の進歩により病勢をコントロールする、すなわち寛解を維持することが可能となってきています。

記者:クローン病で受診するかどうかの判断基準はありますか?

平井先生:初発時には持続的に下痢や腹痛を認めることが多いです。体重減少や発熱などの全身症状や口内炎、肛門の症状(痛みや排液)で発症する場合もあります。これらの症状を認める場合は、消化器内科や胃腸科専門医を受診するべきと思います。

重要なのは、若干の強弱はありますが、症状が長く続くことです。この点は、同様の症状をきたし得るウイルスや細菌で起こす腸炎などとの鑑別点になります。

記者:クローン病とその他の類似疾患との違いについて教えてください。

平井先生:類似疾患を鑑別が必要な疾患と定義してお話し致します。鑑別疾患としては、感染症と感染症以外の疾患に分けられます。

感染症では、一般的な腸炎や回腸末端に好発するエルシニア腸炎や腸結核が重要です。結核は慢性化することが多く、しばしばクローン病との鑑別が難しいことがあります。

感染症以外の疾患としては、ベーチェット病やその類縁疾患である単純性潰瘍、薬剤性腸炎、非特異性多発性小腸潰瘍症などがあります。また、潰瘍性大腸炎はクローン病とともに炎症性腸疾患と総称されますが、クローン病との鑑別に苦慮する場合が少なくありません。

これらの疾患にはそれぞれ特徴的な経過、画像所見ならびに病理組織学的所見(顕微鏡でみる炎症の所見)があり、最終的にはクローン病を含めた各疾患の診断基準を考慮して鑑別していきます。

記者:現在のクローン病の治療法や最新情報について教えてください。

平井先生:従来から本邦におけるクローン病の治療は、栄養療法、薬物療法、外科手術の3つの柱からなっています。外科手術は腸管の狭窄、瘻孔(腸管が他の腸管、皮膚や他臓器と交通をつくること)、膿瘍、癌などの合併症をきたした場合に行われます。外科手術しても根治する疾患ではありませんので、クローン病の治療は内科的治療が中心となります。

栄養療法は食物を異物(食事性抗原)として体が反応することがクローン病の病因に関与することから、その抗原の進入を防ぐことと栄養状態を改善する目的で古くから行われています。有効な治療法ですが、食事制限や栄養剤の味覚といった点を患者さんが受け入れにくいことが難点です。

前述したように現時点では明らかな原因は不明ですが、病気に関わる病態の解明は進んできており、様々な機序が考えられています。中でも異物を排除するための体の働きである免疫の異常が大きく関与していることがわかっています。

このため炎症を起こす物質を標的とした薬物療法が飛躍的に進歩しています。抗TNF-α抗体は、TNF-αという炎症を起こすサイトカインという物質を標的とした抗体製剤(抗体を用いますので生物学的製剤とも呼ばれます)で、現存する治療の中では最も効果が高い薬剤です。

この薬剤を用いることで長期の寛解維持、入院や外科手術の回避やQOLの向上が可能となっています。しかし、導入当初は効果が高いものの投与を継続することによって20~50%の患者さんに効果減弱する現象(二次無効といいます)が起きてきます。この対策には抗TNF-α抗体の投与量を倍にしたり、異なった抗TNF-α抗体製剤にスイッチすること等が行われていますが全ての患者さんに有効ではありません。

そこで、TNF-αではない物質をターゲットとする、あるいは別の機序による抗炎症効果を期待して新たな薬剤の開発が進んでいます。

記者:クローン病で悩んでいる患者さんへメッセージをお願いいたします。

平井先生:クローン病は今のところ完治する疾患ではありませんが、有効な治療を受けることで活動性をコントロールすることは十分可能です。個々の患者さんによって適切な治療は異なり、必ずしも新しい薬剤がよい治療とは限りません。わからないことは積極的に主治医の先生に相談し、自分に合った治療を見つけましょう。

クローン病は特定疾患にも指定されており、行政からの援助や就労に関する支援も受けられます。専門施設では患者さんへの公開講座なども行われています。また、患者会では、様々な病状の患者さんの話も聞けると思います。様々なアプローチで病気を克服していって頂けたらと思います。

平井郁仁氏

平井郁仁 略歴

  • 1991年 福岡大学医学部卒業
  • 1997年 福岡大学大学院医学研究科 課程修了
  • 1997年~1998年 天陽会中央病院
  • 1998年~2000年 福岡大学筑紫病院
  • 2000年~2004年 佐田厚生会佐田病院
  • 2004年~2007年 福岡大学筑紫病院 助手、併任講師
  • 2007年~    福岡大学筑紫病院 消化器内科 講師

資格・所属学会

  • 日本消化器内視鏡学会
  • 日本消化器病学会
  • 日本大腸肛門病学会
  • 日本消化管学会
  • 日本内科学会
  • 日本大腸検査学会
  • 日本カプセル内視鏡学会
  • 日本炎症性腸疾患研究会
  • European Crohn's and Colitis Organisation
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