Caloo(カルー) - [特集記事] 【糖尿病最前線】糖尿病の大血管障害について 東京医科歯科大学吉田雅幸教授に聞く
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糖尿病最前線

糖尿病と脂質異常症が合わさると脳卒中、心筋梗塞などの大血管障害のリスクが高まる。ぜひご自身の脂質の状態を知って頂きたい。 東京医科歯科大学 吉田雅幸教授に聞く

最終更新日: 2010年11月29日

記者: 具志林太郎

記者:糖尿病の大血管障害とはそもそもどんな病気でしょうか?

東京医科歯科大学 吉田雅幸教授 東京医科歯科大学 吉田雅幸教授

吉田教授:糖尿病が要因で引き起こされる血管障害の一つです。具体的には、大血管が糖尿病により傷つけられ動脈硬化を起こすものです。動脈硬化が進行すると心臓の血管であれば心筋梗塞、脳の血管であれば脳卒中といったように重い病気を引き起こします。

私たち医療関係者は一度、心筋梗塞を起こされた患者さんは再び起こす可能性が高いので注意深く治療を行いますが、糖尿病は発症した時点で、すでに一度心筋梗塞を起こされた患者さんと同じくらい心筋梗塞を起こすリスクが高まっているといえます。

細小血管障害は糖尿病により毛細血管が傷つけられ神経症、腎症、網膜症といったいわゆる糖尿病の3大合併症を引き起こすことで知られていますが、大血管障害の一般の方への認知はまだ低いかもしれません。

糖尿病の慢性合併症
細小血管障害糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害など
大血管障害脳血管障害(脳卒中など)、虚血性心疾患(心筋梗塞など)、糖尿病性壊疽など
その他脂質異常症、慢性感染症、胆石症、白内障など

記者:具体的にはどのような治療が行われているのでしょうか?

吉田教授:糖尿病のみを患っている方は血糖値のコントロールが中心になります。しかし、糖尿病だけでなく脂質異常症を患っていますと動脈硬化のリスクがさらに高くなります。そのため脂質異常症の治療、具体的にはコレステロール値のコントロールも重要になってきます。コレステロール値の目安は、糖尿病の患者さんですとLDL-C(悪玉コレステロール)で120未満、できれば100未満を目標にしたいです。

記者:脂質異常症の治療薬についてもう少し教えて頂いてもよろしいでしょうか?

吉田教授:脂質異常症の治療薬はいい薬のラインナップが揃ってきておりまして、LDL-Cや中性脂肪の状態などからスタチン系、EPA製剤、フィブラート系、小腸コレステロール阻害薬(エゼチミブ)を組み合わせて使用します。コレステロールは肝臓や腸など複数の場所から生まれるので、それぞれの場所で少しずつコレステロール減らしていくことで生理的にやさしい治療を行うようになってきています。そのため複数の薬を組み合わせることが多くなっています。

系統製品名一般名製薬会社名発売年ジェネリック
スタチン系メバロチンプラバスタチン第一三共1989年有り
スタチン系リポバスシンバスタチンMSD1991年有り
スタチン系ローコールフルバスタチンノバルティスファーマ1998年有り
スタチン系リピトールアトルバスタチンアステラス製薬2000年
スタチン系リバロピタバスタチン興和/第一三共2003年
スタチン系クレストールロスバスタチンアストラゼネカ/塩野義製薬2005年
フィブラート系ベザトール/ベザリップべザフィブラートキッセイ/中外製薬1991年有り
フィブラート系リピディル/トライコアフェノフィブラートあすか製薬/科研製薬、大正薬品/帝人ファーマ2005年
EPA製剤エパデールイコサペント酸エチル持田製薬1990年有り
小腸コレステロール吸収阻害薬ゼチーアエゼチミブシェリング・プラウ/バイエル2007年

記者:糖尿病の大血管症、特に脂質異常症も関連するものに対する今後の展望について教えてください。

吉田教授:先ほど申し上げましたように脂質異常症の治療に関してはかなりいい薬が既にできています。ですので、病院に来て頂き治療を行って頂ければコレステロール値は十分にコントロール可能だと考えています。

問題は、脂質異常症、糖尿病もそうですが、治療を受けていない潜在患者が多いことです。脂質異常症、糖尿病による動脈硬化が起き始めても自覚症状がほとんどないので、さらに進展して血管が詰まってしまい心筋梗塞、脳卒中を起してから運ばれてくる患者さんが大勢います。今後の課題はいかに自覚症状の無い患者さんに病気であることを気付いてもらい治療を受けて頂くかが課題になってきそうです。

その中で、POCT(ポイントオブケア検査)という考え方がより重要になってくると思います。これは「患者の身辺での検査」という定義ですが、例えばクリニックの外来などで手軽に受けられる血液検査などのことです。実際、コレステロールの値も少量の指先採血で5分程度で計れる小型の機械が発売されています。患者さんが手軽に検査を受けられる環境を作ることで自身の健康状態を知れるということの重要性が増してきそうです。

記者:最後に読者の方に一言頂けますか?

吉田教授:ぜひご自身の脂質の状態、具体的にはコレステロールや中性脂肪の値を知って頂きたいと思います。できれば年一回の健康診断だけでなく2ヶ月から3ヶ月に一度計れるとよいと思います。先ほども申し上げましたように最近は検査機器の性能も向上し、少量の指先採血で5分程度で結果がでる医療機器なども出てきています。

動脈硬化の起き始め、つまり血管の詰まり始めというのは自覚症状がほとんどありません。一度詰まってしまい心筋梗塞や脳卒中を起こしてしまうとその後の人生のQOL(クオリティオブライフ)は大きく低下してしまいます。ご自身の脂質の状態を知り、適切な医療機関で治療を受けて頂きたいと思います。

吉田雅幸氏

吉田雅幸 略歴

東京医科歯科大学生命倫理研究センター長
大学院医歯学総合研究科先進倫理医科学開発学分野 教授

1988年東京医科歯科大学医学部卒業。循環器内科研修などを経て、1991年九州大学に国内留学。1992年〜1996年米国・ハーバード大学医学部に留学、血管細胞生物学の研究に従事する。1996年より、東京医科歯科大学難治疾患研究所助手。2002年より同血流制御内科学・病態代謝解析学分野 助教授。2010年4月より現職。研究倫理審査のシステム構築および老年病内科臨床に携わる一方で、動脈硬化症における脂質異常症・炎症反応の重要性について研究を展開している。

著書紹介

脂質異常症薬物治療テクニック(Amazonで詳しく見る)
吉田 雅幸
南江堂 2010-07-21
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