胸椎椎間板ヘルニアについて: 胸椎（きょうつい）は背骨の胸部分にある12個の骨から構成され、骨と骨の間にはクッション的役割を持つ「椎間板（ついかんばん）」が存在する。「胸椎（きょうつい）椎間板ヘルニア」は、胸の椎間板の中にあるゲル状の髄核（ずいかく）が背中側に飛び出して脊髄（せきずい）神経を圧迫することにより、下肢（足）のしびれや筋力低下などの症状を引き起こす病気。
頸椎（けいつい：首）・腰椎（ようつい：腰）の椎間板ヘルニアに比べて稀な発生率であり、年間で約100万人に1人の割合。
初期症状は足のしびれや脱力感で「足がもつれる」「階段で不安になり手すりを持つようになる」ということで気づくケースがよくある。胸椎椎間板ヘルニアでは椎間板の中の髄核が中央に脱出することが多いので、側方に脱出して「痛み」となるよりも、脊髄（せきずい）圧迫による体幹から下肢にかけてのしびれ・感覚低下・筋力低下が主症状となる。背中に肋間神経痛のような強い痛みの出現は少なく、症状が進行すると、歩行障害・排尿排便障害が顕著にみられてくる。
X線（レントゲン）検査では神経圧迫状態が分かりづらいため、確定診断にはMRI検査が必要。ただし、MRI検査でヘルニア脱出が認められても、脊髄圧迫や歩行障害などが現れていなければ、今すぐ手術する必要はない。手術による神経麻痺の合併症リスクはあるが、脊髄圧迫による症状の放置は麻痺の進行を招き、手術が遅くなると適切な処置を行っても症状が残存する可能性がある。なお、歩行障害など脊髄症状がなければ、薬物療法・リハビリテーションなどの保存的治療を行うことがあるが、あくまで対症療法。保存的治療では下肢の麻痺は改善されない。
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