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心房細動特集

心房細動の治療法と最新情報 八王子循環器クリニック 院長 小野完二先生に聞く

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最終更新日: 2015年10月30日

記者: 具志林太郎

記者:心房細動とはどんな病気でしょうか?

小野先生:心房細動という病気は不整脈の一種です。

不整脈は動悸や脈の異常などの自覚症状がなく、健診などで心電図を撮ったときに発見される場合もあります。 不整脈の中には放っておいても心配ないものから、すぐに処置をしないと命にかかわる重篤なものまでいろいろな種類があります。

心房細動はその中間に位置する重さの疾患で、心房細動そのものですぐに死んでしまうようなことはないけれど、放っておくことはできない病気であり、病院に定期的に通って治療もしくは観察が必要です。

自覚症状としては、動悸や胸痛、呼吸困難、失神、めまい、倦怠感などを感じる場合もありますが、まったく自覚症状がなくて自分では気づかない場合もあります。

心房細動の原因は特に決まったものはありませんが、加齢、高血圧、弁膜症や心筋梗塞などの心臓病、喫煙、過度の飲酒、糖尿病、甲状腺疾患などが影響します。

記者:心房細動の患者様は増えているのでしょうか?

小野先生:日本では現在約70万人の人が心房細動と診断されておりますが、高齢化が進むわが国では今後増加することが予測されます。

記者:現在の心房細動の治療法や最新情報について教えて下さい。

小野先生:以前私たち医師は心房細動を診ると抗不整脈薬を使って正常な脈に戻そうと努力していました。比較的短期間で正常な脈に戻る場合も多いのですが、抗不整脈薬は副作用が強いものも多いため、今ではまず血栓(血のかたまり)の予防が重要であるという考え方に変わってきています。

また、心房細動の合併症で重要なのは心不全と脳梗塞です。

心房細動になると心房が収縮しなくなるため、心機能が低下したり、脈が速くなるため心不全を起こすこともありますが、むしろ心房の中で血液が淀んだ状態になって、そこで血栓ができてしまうことがより重大な問題。 左心房にできた血栓は左心室を通って大動脈に流れていきます。そして大動脈の支流である脳の血管に詰まって脳梗塞を起こすわけです。 心房細動の血栓による脳梗塞は脳の血管自体の動脈硬化で起こる脳梗塞よりも重症になることが多く、寝たきりや、要介護など、社会的な問題になります。

血栓の予防には血が固まりにくくする薬(抗凝固薬)を使います。 以前まではワーファリンというお薬が心房細動の血栓予防には唯一有効でした。 この薬はビタミンKを阻害することで血が固まるのを防ぐのですが、効き方に個人差が激しく、個人の中でも食事や薬の影響を非常に受けやすく頻回に血液検査をしながら微妙な用量調節が必要です。

最近はワーファリン以外にも新しい抗凝固薬が日本でも使えるようになりました。ただしワーファリンと比べてお値段が高いのが難点です。

このように心房細動では、まず血栓の予防、すなわち脳梗塞の予防を治療の中心と考えて、そのうえで正常の脈に戻して動悸などの症状をとる努力をするのか、それとも心房細動はそのままにして脈拍数を安定させて心不全を予防していくのかを選択します。

自覚症状があまり強くなくて慢性化しているような心房細動の場合は無理に強い薬で正常な脈に戻そうとせず、脈拍数を適度に保つ方が合併症も少なく、生命予後も変わらないので、抗凝固両方がうまくいっていれば心房細動を容認して心拍数を整える治療を選択することが多くなっています。

しかし、最近は静脈からカテーテル電極を心臓の中まで入れて心臓の壁を電気で焼く、カテーテルアブレーション治療が急速に発達してきており、心房細動にも盛んに行われるようになってきています。今のところはどんな心房細動でも治せるというわけではありませんが、この手の分野は日進月歩ですので、今後はアブレーションで正常な調律に戻す治療がより多く選択されるようになる可能性もあります。

記者:心房細動ではと心配されている患者さんへのメッセージをお願いします。

小野先生:心房細動では、今現在自覚症状がなくても先程述べたように心不全や脳梗塞を起こすことがありますので、定期的に医療機関へ通院して、薬を出されたら飲み忘れの無いようにしっかりと服用することが大切です。

小野完二先生

小野 完二 略歴

  • 昭和33年9月 東京都生まれ
  • 昭和60年3月 秋田大学医学部卒業
  • 昭和60年4月 東京女子医科大学第一外科入局
  • 昭和63年7月1日~ 12月31日 国立大阪病院心臓血管外科
  • 平成6年5月 東京女子医科大学第一外科退局
  • 平成6年5月 国立東宇都宮病院循環器科就職
  • 平成13年12月 国立東宇都宮病院循環器科退職
  • 平成14年1月 日野医院就職
  • 平成15年9月 日野医院退職
  • 平成15年10月 八王子循環器クリニック開設   現在に至る

所属学会・認定医など

  • 日本胸部外科学会認定医
  • 日本呼吸器学会専門医
  • 日本循環器学会会員
  • 日本医師会認定スポーツ健康医

専門とする疾患など

  • 循環器科
  • 呼吸器科