最終更新日: 2010年11月22日
記者: 具志林太郎
「糖尿病のチェックができて本当によかった。ちょっと太っているので気になっていましたが、定期健診を受けていなかったので心配だったんです」都内に住む74歳の主婦井上千賀子さん(仮名)は糖尿病チェックを受けた感想を嬉しそうに語った。
井上さんは、10年前にご主人を亡くされてから一人暮らしで、定期健診を受けていなかった。今日は孫が働くレストランに食事をした帰りに丸善の前を通りかかり、「本屋で糖尿病無料チェック体験」を目にした。小太りで普段から糖尿病が気になっていた井上さんはせっかくの機会なので受けてみることにしたのだ。
「本屋で糖尿病無料チェック体験」は糖尿病診断アクセス革命事業の一環として東京大学特任准教授矢作直也氏の主導により行われた。矢作氏は、「糖尿病は治療を受けていない人の方がずっと多い現実があり、目の前の患者さんの治療だけを行っていればよいということでは全くない」という問題意識から糖尿病のチェックをする機会を与えようと奮闘してきた。指先採血によるHbA1c測定という最新の技術を用いた糖尿病チェックキャンペーンは各地で好評を博し実績を積み上げてきた。
前述の井上さんの糖尿病チェック結果は、HbA1cで5.4%とやや高かった。太っていて心配という本人の懸念が数値で裏付けられることとなった。井上さんは「やや高いということがわかり本当によかった。自分の状態が知れれば今後、食事や運動などで対策を取ることができます。知らないと何もできないので」と感想を述べた。
今回、180名が糖尿病無料チェック体験に参加したことについて、矢作氏は「糖尿病を気にしている方は多くおり、気軽にチェックを受けられる環境の整備が必要となるであろうことが証明できた」と語る。
日本初の試みである「本屋で糖尿病無料チェック体験」は、朝日生命成人病研究所附属丸の内病院、出版社のサイカス、指先採血によるHbA1c測定装置を販売する三和化学研究所、開発元のサカエ、社団法人ウエルネスアカデミー、丸善、ボランティアの大学生など数多くの協力のもと行われた。糖尿病無料チェックの体験者数だけでなくこれだけ多くの協力者が現れることも糖尿病チェックの重要性を認識している人が多い証拠と言えるだろう。
矢作氏は「このような活動が全国まで広がるように今後も運動を進めていきたい」と今後の抱負を語った。