40歳の若さで更年期鬱となった母。幼少期のつらい記憶を引きずっていたようです。 (写真あり)

母の体験です。幼くして両親と死別、奉公しながら苦学しつつも思うように勉強させてもらえず16歳で上京、住み込みで働きながら美容師の資格を取り働き、23歳で母となり、以後専業主婦の私の母です。

体は至って丈夫でPTAも気丈にこなしていましたが、40になって異変が起きました。
幻聴と妄想です。

幼い頃、姉の投身自殺を目の前で見てしまったりと苦労が多かった事と、戦前生まれの男尊女卑思考の父に蔑まれて来た事が、ずっと心の中に燻っていたそうで、私が高校卒業し就職する辺りで様子がおかしくなりました。

突然台所で呼吸困難になり倒れたり、昔の事を言いながら、私を父と似て来たと憐れんだり。
私がはぐらかして嫌味を言ったりすると病状が悪化。
今思えば、症状をきちんと調べて向かい合って話を聞けば、あそこまで悪くすることはなかったと反省しています。父も私もキツそうにする母を「何を大げさな」とか「気を引こうとしてるんじゃないか？」とか忙しい時期だったので、気にしたくない気持ちから少し疎ましい気持ちもあったのです。

聞かないこと、否定する事がこの病状をさらに悪化させました。

鬱は疎外感から更に悪化していきます。家出して止める妹を道連れに県外の方まで行き、警察のお世話にもなりました。父に打撲も負わせました。

幻聴で亡くなったお姉さんの声を聞いたようなので催眠術治療も受けましたが効果はありませんでした。
最終的には精神科に騙し騙し引きずるように連れて行き、更年期鬱の診断。

自殺の恐れもあり格子のついた部屋に入る事に。皆で泣きました。

監視カメラに映る母を見て、自分はなんて酷い娘だと。たくさんの薬を飲んで、虚ろな母を見て、この先、母はどうなるのだろうと悲しくなりました。

しかし、徐々に落ち着きを取り戻し、部屋も普通の所に移動し、適切な処置もあって、3ヶ月で退院。
半年はボーッとした状態でした。あちこち連れて行って旅行もしましたが、1番の変化は孫の出現です。
2年ほど過ぎた頃、私が妊娠したときくやいなや、私の出番とせっせとお弁当を作っては家事の手伝いをしに電車を乗り継いで来、顔色は輝きました。

孫が生まれたらそれはもう、更年期が嘘のように元気に動きお世話をして、昔の記憶を私にしてくれました。
その時に初めて私は母の辛かった幼少期の話を具体的に聞きました。
母はそれまで自主的に話そうとせず、それがずっと心の中で暗く渦を巻いていたのです。聞いてあげる事が、これほど大事な事なのかと、後々、鬱に関する書物を読み知りました。どんな事でもそうなのかもしれません。

聞いてあげて、受け入れて共感してあげる。誤った事ならば、一旦聞いてあげて、そうかもしれないね、と言ってから「でもね、」と訂正しても遅くないです。共感してあげてほぐしてあげてから、治療に入ってあげてください。あんなに大変な事がありましたが、母は嘘のように今、元気です。

70過ぎても毎日歩いてバイトに行きます。昔はガリッガリで痩せていましたが、更年期が過ぎたら今は好きな物を食べて、プックプクです。これはなおした方が良いのですが。

更年期鬱のご本人そしてご家族の皆様、必ず更年期鬱は治りますので、深呼吸して落ち着いて、頑張って来た自分を褒めてあげてください。聞いてもらって聞いてあげてください。他人でも良いです。聞く事が大事です。そしてお薬も適量飲みましょうね。必ず少なく、そして不要になりますよ。