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糖尿病最前線

CGMで1日の血糖値の動きを知ることでより的確な糖尿病治療を行える 東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 西村理明先生に聞く

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最終更新日: 2011年01月12日

記者: 具志林太郎

糖尿病治療にCGMという新しい医療機器が登場した。国内のCGMの第一人者である東京慈恵会医科大学の西村先生にお話を伺った。
西村理明氏 東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 西村理明先生

記者:CGMの基本的な仕組みについて教えていただけますか?

西村先生:CGM(持続血糖モニター)は、24時間連続して血糖値を計れる装置です。具体的には、お腹に針を刺して、間質液のグルコース濃度を測定し、血糖値を推定するというものです。血糖値を直接計っているわけではないので、ある程度の誤差は生じます。

CGM 24時間連続して血糖値を計れる医療機器(CGM)
※出典:日本メドトロニック株式会社

記者:CGMの利点を教えて頂けますか?

西村先生:いままで見ることのできなかった1日の血糖値の動きを知ることができる点です。血糖値は1日の中でも大きく動いています。空腹時血糖やHbA1cで異常が見つからなくても食後に著しく血糖値が上昇していたり、就寝中に血糖値が下がり低血糖の状態になっていたりするケースが多々あります。CGMを用いて24時間連続して血糖値を知ることができれば、適切な治療を行うことができます。

私自身は4年前から治療に使わせてもらっていました。その中で、血糖値のコントロールは十分できているはずなのに、なかなかHbA1cが改善しない糖尿病患者さんがいまして、CGMを行ってみたところ、思わぬ血糖値の動きをしておりびっくりしたこともありました。

一日の内でも血糖値は大きく動いている(食後高血糖の糖尿病患者のモデルケース) 一日の内でも血糖値は大きく動いている(食後高血糖の糖尿病患者のモデルケース)

記者:CGMを使用することが適するのはどのような患者さんですか?

西村先生:CGMは2010年より保険適用になりました。ただし、1型糖尿病患者と2型糖尿病患者の中で血糖値のコントロールが難しい方のみしか使えません。私個人としては、空腹時血糖やHbA1cでは見つけにくい糖尿病を発見するためにも利用できるようにしたいのですが、現状では保険適用となっておらず難しいです。

記者:米国ではCGMを用いた治療が進んでいると言われていますが?

西村先生:米国では、CGMとインスリンポンプは一般的に使用されている医療機器です。最近では、CGMとインスリンポンプを組み合わせた医療機器も既に発売されています。さらに、ヨーロッパでは、CGMで血糖値を計測しつつ、血糖値が下がり過ぎるとインスリンポンプからのインスリンの注入が自動的に止まる機器まで登場してきました。

またこれはインスリンポンプ全般に言えるのですが、見た目がおしゃれなので、外出先でも気兼ねなく使えます。インスリン注射を人前で行うことに抵抗がある患者さんも多いので。

記者:日本でCGM、インスリンポンプの利用が進まないのはどうしてなのでしょうか?

インスリンポンプ ボタンを押すだけでインスリンが注入できる医療機器(インスリンポンプ)
※出典:日本メドトロニック株式会社

西村先生:CGMに関しては2010年に日本で承認されたばかりですし、保険適用も1型と2型の一部に限られてしまっています。また、最新のCGMは電波の関係でまだ日本では使えません。

インスリンポンプに関しては保険の評価が低すぎるという問題があります。もう少し保険点数が上がらないと、医療機関にとっては赤字覚悟で使用する機器になってしまうため使用が促進しないと思います。私が担当した患者さんでは約80%の方が満足して使い続けてくれていますので、患者さんには良いものだと思っています。

記者:最後に読者の方に一言頂けますか?

西村先生:健康診断での空腹時血糖やHbA1cの値が正常値の範囲内で安心する方も多いと思いますが、ご自身の食後の血糖値のピークをしっかり知ることも大事です。健診で血糖値がちょっと高い、不安があるなど感じたらブドウ糖負荷試験を受けてしっかり調べることをお勧めします。

西村理明氏

西村理明 略歴

  • 1991年3月 東京慈恵会医科大学卒業
  • 1991年5月〜1993年3月 東京慈恵会医科大学附属病院 内科研修医
  • 1993年4月 東京慈恵会医科大学附属病院第3内科入局
  • 1997年3月 東京慈恵会大学臨床系大学院(内科)修了
  • 1997年4月〜1997年7月 東京慈恵会医科大学附属病院内科学講座第3 勤務
  • 1998年12月 Graduate School of Public Health, University of Pittsburgh 修了
  • 1999年3月〜2000年6月 Visiting Assistant Professor, Graduate School of Public Heath, University of Pittsburgh
  • 2000年4月〜2002年3月 富士市立中央病院内科 医長
  • 2000年7月〜 Adjunct Assistant Professor, Graduate School of Public Heath, University of Pittsburgh
  • 2002年4月〜2006年7月 東京慈恵会医科大学病院糖尿病・代謝・内分泌内科 助手
  • 2006年8月〜 東京慈恵会医科大学病院糖尿病・代謝・内分泌内科 講師

著書紹介

CGM -持続血糖モニターが切り開く世界- 改訂版
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西村 理明
医薬ジャーナル社 2011-06