最終更新日: 2010年11月25日
記者: 具志林太郎
深井医師:脂肪肝とは肝臓に脂肪滴が蓄積した状態をいいます。以前はアルコールを飲まれる方に多かったのですが、最近はほとんど飲酒をしない方に増えてきており、このような脂肪肝を非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)といいます。正式には肝臓内に10%以上の脂肪沈着が認められる場合ですが、超音波検査でもわかる30%以上の脂肪沈着が目安となっています。
現在、成人では10〜30%が脂肪肝だと推定されています。性別年代で見ますと、男性ですと30歳代から60歳代のまで方が25%前後と高く、一方、女性では閉経後に増加し60歳代で約20%の方が脂肪肝になっていると推定されています。
NASH(非アルコール性脂肪肝炎)は、NAFLDのうち慢性的に肝臓内で炎症を繰り返すことで線維化し、肝硬変、さらには肝臓癌にまで繋がる危険な病気です。脂肪肝の患者さんの約10%がNASHになると考えられています。
深井医師:脂肪肝の背景には、肥満などを原因としたインスリン抵抗性があります。従ってメタボリック症候群が肝臓に表れているとも言えるでしょう。脂肪肝からNASHへ進行するメカニズムとしてツーヒットセオリー(two hit theory)が提唱されています。まず、肥満などを原因として脂肪肝が起こり、そこに酸化ストレス、サイトカインによる細胞傷害などが加わることでNASHへ移行するというものです。
深井医師:治療は、食事療法と運動療法が基本です。薬としてはインスリン抵抗性改善薬、肝細胞を保護するためにウルソデオキシコール酸やEPLなどを使うこともあります。脂肪肝もNASHも治療法自体は大きく変わりませんが、NASHに移行してしまうと治療することが難しくなってくるので、脂肪肝の段階でしっかりと治療したいです。
深井医師:脂肪肝、NASHを肝臓単独の病気ではなく、全身疾患が肝臓に表れたものだと捉えて頂きたいです。脂肪肝を放置しているとNASHへの移行というリスクもありますが、脂肪肝を招いた生活習慣が、糖尿病や脂質異常症も招き、脳卒中や心筋梗塞と危険な合併症へ繋がるリスクもあります。
食生活の欧米化や肥満を原因として日本でも脂肪肝、NASHの患者は着実に増えています。糖尿病、脂質異常症、高血圧など他の生活習慣病と同様に脂肪肝にも自覚症状がほとんどありません。定期健診で異常が発見されましたら、速やかに適切な医療機関を受診して、早期に治療に取り組んで頂きたいと思います。